キミと空とネコと23

久し振りに夢を見る事もなく、グッスリと眠る事が出来た。武蔵もオレと一緒に起きて前足をぐーーっと伸ばして伸びをする。

「武蔵、メシ食うか？」

「にゃんっ!!」

武蔵のメシを用意しながら、自分もお腹がすいてきたと感じる。

勝手なもので、今まで食べる気も起きなかったのに心がスッキリすると食欲も湧くらしい。

人間の感情なんてこんなもんか･･･などと思ってしまった。

冷凍庫にあったグラタンを焼く。

アツアツのグラタンは元気をくれた。ちょっと胃に重かった気がするけど･･･。

よしっ、今日は不動産屋巡りだ。

病院もいっておかなくちゃな。薬をもらっておこう。

今日は平日だから、きっと響夜も雪夜さんも仕事で逢う事はないだろう。夕方までに済ませて帰ってくればいいよな。

部屋の掃除と洗濯をして身支度を整える。

「よし。武蔵、行って来るな。夕方までには帰ってくるから留守番頼む。」

武蔵に声を掛け玄関を開ける。

よしっ。響夜はいない。

エントランスから出ると、青い空が見えた。

「今日はいい天気だな。青い空が気持ちいいや。きっといい事あるよな。」

病院へ行って薬をもらって、オレはプリントアウトした不動産屋へと歩みを進める。

電車に揺られて窓の外の流れる風景に止まっていた時間が動き出したのを感じた。

不動産屋の案内でマンションの中へ入る。

「お客さんラッキーですよ。ここ人気があってなかなか空かないんです。日当たりもいいし、景色もいいでしょう。何よりリラックス出来るようにとお風呂が広いんですよ。ペットもＯＫだし、スーパーも駅も近いし、動物病院や他の病院も近いしね。」

ベランダからの景色もキレイだった。何より風呂場が大きい事と、ペット可なこと、動物病院が近くにあることがオレをひきつけた。

他の物件を見る事もなくここに決める。

「じゃ、ここに決めます。手続きお願いします。」

不動産屋に戻り、契約をすると鍵を渡された。

「じゃ、いつでも入ってくださってかまいませんが何時ごろ入られます？」

「そうですね。明後日でもいいですか？」

「はい。わかりました。明後日ですね。電気やガスはお客様が手続きしてください。電気、ガス会社は契約書のファイルに挟んでありますので。何か分からないことがあればいつでもお聞き下さい。ありがとうございました。」

「では、よろしくお願いします。」

不動産屋を後にしてマンションの周りの散策をする。

動物病院は新しくてキレイだった。武蔵に何かあればここにくればいいな。

スーパーは品揃えが多く、野菜や肉、魚も新鮮だった。少し食材を購入する。

病院も駅前にいろんな病院が入っているビルがあった。

今の病院にはもう行かないつもりだったので、近いうちにこのビルの病院へ行こうと思った。

今の病院で、心療内科に通っておいたほうがいいと言われていたから。

睡眠薬も内科でもらっているのでは効かない事が多く、それ以上強い薬は心療内科じゃないと出せないと言われていた。

「そうだ、いい加減仕事探さないと･･･。」

ふと入ろうとした本屋でバイト募集の張り紙を見る。

『バイト募集。社員への登用制度有り。経験不同。勤務時間9時から19時の間で相談に応じます。』

大好きな本に囲まれて過ごすのっていいんじゃない？それにリーマンだと残業だとか出張だとかあったら、武蔵の世話が出来ないから定時で上がりたいしな。

駅前の大きな本屋だから安心して働けそうな気がする。

携帯は電源を落としたままだった。

引っ越したら番号も変えよう。まさしく心機一転だ。


久し振りに外へ出て歩き回ったせいだろう疲れて動くのが辛くなってきた。

帰りは贅沢だと思ったけど、身体のことを考えてタクシーで帰る。

マンションへ帰るとベッドへ直行となってしまった。

「つ･･･つかれたぁ～～～。オレ体力ねぇ～～～。洗濯物と入れなきゃ･･･。」

だけど指一本動かすのが億劫になっていて、まだ15時前だと言うのに、心地良い疲労感にそのまま寝てしまった。

武蔵に起こされて寝ていた事に気がつく。

「ごめん。武蔵ご飯だな。」

武蔵にご飯をして、自分には野菜たっぷりの雑炊を作る。野菜たっぷりの雑炊は胃にも優しく身体があったまる。

元気がでたので片付けをして引越しの準備をする。

元々そんなに荷物はない。家具は業者に単身用で頼めば十分だったし、その他も一日あれば出来る。いるものといらないものを分ける。

「オレって案外持ってるもの少ないんだなぁ。」すぐに整理し終わってしまい苦笑する。

19時前だったので、引越しの業者に電話して一番安いところに頼んだ。

明日見積もりに来て引越しの段取りをする事となった。

「武蔵、明後日には引越しだぞ。今度の所は景色がいいんだ。病院も近いし武蔵もきっと気に入るよ。風呂も大きいんだぞ。」

そして次の日、引越しの業者に見積もりをしてもらう。

「明日9時に来ますので準備をお願いします。」業者を見送り、ダンボールに荷物をつめ大まかに掃除をしておく。

そんなこんなであっという間に一日は過ぎてしまった。

「武蔵、今日でこのマンションとはお別れだぞ。明日からは新しい毎日が待ってる。そうだ、雪夜さんと響夜にこのままじゃ失礼すぎるよな。ジュースとかのお金も払わないといけないし、手紙でも書いておくか。」

雪夜さんと響夜あてに手紙を書き、そこにお金を同封する。明日、引っ越すときに響夜のポストに入れておけばいいだろう。

「武蔵、明日も早いしもう寝るか。」

武蔵を抱き上げ、一緒に布団に入って眠る。

程なく心地よい睡眠にいざなわれ夜の闇に包まれて眠りについた。

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ハル様なぜか「キミ空22のコメントのお返事が返信できず、23のところで返信させていただきます。(*_ _)人ｺﾞﾒﾝﾅｻｲ

ハル様こんばんは☆

海人をそんな風に思ってくれてありがとです。やっぱ、ハル様は海人のよき理解者ですね。海人の傍にいてくれたら、海人はもっと早くに幸せになれるのかも･･･。
海人はコウキが好きすぎたのでコウキを悪く思いたくないんですね。
だから自分が悪いと思ってしまう。「辛かったね。悲しかったね。」って慰めてくれる人もおらず、自分の中に閉じ込めておくしかない感情。

逃げなのかもしれません。このまま引っ越すのは。でも、知らない街に行く事で自分を作り直していけたらって思うのは、ハル様の言うように海人にとっては生き直すことになるんだと思います。違う街に行く事でゆっくりと自分を取り戻して行けたら･･･。

生き残った事の意味、生き残ったからこその毎日を幸せを海人に知って欲しい。死ねなかったんじゃなく、生き残った意味。海人はわかってくれるかな？

ハル様の娘様がそんな大変な事を経験され、ハル様も胸を痛められたでしょうね。そんな大変な事を教えてくれてまで海人を応援してくださること、海人に代わって『ありがとう』と言わせてください。傷は残ってるけど、助かった命があればこそ、いろんな人と巡り会え、小さくても『良い事』『幸せ』を感じれるのですね。生かされた命はもう捨てる事は出来ません。海人には武蔵もいますしね。

命を絶とうとした時は何も見えてなかった海人ですが、今は自分の気持ちを受け入れた事で冷静になれているのでバカなことはしないと思います。見守ってくれているハル様がいるんですもの。

これからの海人が自分なりに頑張れるように見守ってやって下さい。

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