キミと空とネコと25

「ふふっ。海人くんって顔に出るタイプね。わかりやすくてかわいいわ。素直な子は好きよ。」

「顔に出てますか･･･。オレ素直ではないと思いますよ。自分で言うのも変ですけど。」

「安心出来る人間には素直って感じかしら。私は受け入れられたと感じたけど？」

「はい。麗華さんは何か初めてお逢いしたけど安心出来るかも･･･。」

「実は女に興味ないって男が回りにいてね、それでわかったのもあるの。」と微笑む麗華さんはオレの性癖の人種には慣れているらしく嫌悪感もないみたいでオレは安心する。

「そうだ。海人くんお茶飲む？っていってもハーブティしかないんだけど。知り合いにもらったんだけどおいしくないのよねぇ。」

そう言って麗華さんはハーブティを入れてくれたけど、正直言ってあんまりおいしいとは言えなかった。

「これいいハーブティらしいんだけどおいしくないわよね。」麗華さんは一口飲んでまずそうな顔をする。

「麗華さん、失礼ですけど、ちゃんとポットとかカップ温めました？」

「えっ？温めてないけど？」

「オレに入れ直させてくれませんか？オレ、ハーブティ案外好きでよく飲むんです。」

「へぇ。じゃ悪いけど入れ直してくれる？」

「はい。」

オレはカップをもって部屋の横にある簡易キッチンでハーブティを入れ直し、麗華さんに差し出す。

「うん。すごくおいしいわ。どうやったの？」

「よかった。ハーブティも紅茶と同じでまずポットとカップを温めて、実は砕くんです。実と葉では抽出の時間が違いますし、ハーブによっても抽出時間は異なるし。それにお湯はポットのお湯じゃなくて湧かしたお湯を沸騰させて入れて、抽出したハーブは取り出さないと苦味と渋味が出ておいしくなくなるんです。」

「へぇ。よく知ってるわね。ハーブティよくもらうのよ。これからは海人くんに入れてもらうことにする。いい子が入ってきてくれて嬉しいわ。そうだ。店長を紹介しとくわね。」

内線で店長を呼ぶとほどなくドアをノックする音が聞こえ、オレは立ち上がった。

「彼がここの店長よ。」

「はじめまして、店長の『高野　彰人（タカノ　アキヒト）』です。新しいバイトくんかな。ヨロシクね。」

「はじめまして。高瀬　海人です。よろしくお願いします。」

「私の弟なの。私は留守にする事が多いから何かあれば彰人に言ってね。彰人、海人くんに手を出したら承知しないわよ。私の海人くんなんだから。それにアンタのせいで歩を辞めさせるはめになったんだからね。海人くんも気を付けてね。こいつ見境ないから。」

話の内容にビックリする。歩って男？だとしたら店長はオレと同じ？

「姉貴ひどいなぁ。歩とは仲良くやってるし、歩以外に愛するつもりはないんだから。ごめんね。海人くん、びびらないでも大丈夫だよ。歩ってボクの恋人でね、前にここで働いてたんだけど、ボクの恋人になっちゃったから辞めたんだ。ここ社内恋愛禁止だからね。今時･･･。」

「ここでは社長って呼びなさいって何度も言ってるでしょ。それに社内恋愛禁止になったのもアンタが見境なく手を出してたからでしょう。ほんっとに!!」

その後も二人で言い合いをしている。ケンカしているようで実はじゃれているみたいだ。仲のいい姉弟なんだろうな。杉野兄弟といい仲の良い家族がうらやましくて･･･。

「すごく仲いいんですね。」って言うと

「海人くんも私の弟みたいなものよぉ。その泣きそうな表情も萌えるわぁ。」と抱き締めてくれる。

「おいおい。姉貴のほうがヤバイんじゃないの？社内恋愛禁止だからね。」

「ふん。海人くんは弟だからいいのっ。アンタに言われたくないわ。それに社長って呼びなさいよっ。」

抱き締める麗華さんからは薔薇の香りがして、とても柔らかくて･･･。母親にもろくに抱き締めてもらった覚えの無いオレは目を丸くして固まっていた。

「そうだ。海人くんの歓迎会しなくちゃね。」

「社長。今日は作間出版のパーティでしょ。それに海人くんを他のみんなにも紹介してないし･･･。」

たくさんの人の中で歓迎会をされるのはちょっと怖い。今でもいっぱいいっぱいなのに･･･って思っていると

「海人くんの歓迎会は私とアンタだけでいいのよ。他の子たちは呼ばないわ。海人くんが萎縮しちゃうじゃない。アンタも店長なんだから人を見る目をもっと養いなさい。海人くんは繊細なんだからよく考えてものを言いなさい。」ずばっと言い切る麗華さんはオレの事どんだけ見抜いてるんだろう。

「はいはい。でも今日はダメだからね。海人くんは明日からきてくれるんだろう？今日いるスタッフに挨拶しておこうか。」

「あーあ。残念。パーティなんかより海人くんといたいわ。」と本気でうなだれる麗華さんにオレも彰人さんも苦笑する。

「近いうちにすればいいじゃないか。休みの前の日の方が楽しめるしさ。」

「オレ、ネコ飼ってるんで夕飯とかしなくちゃいけないので、突然は無理なんです。すいません。」

「「えっ。海人くんネコ飼ってるの？」」キラキラの目をして二人の声がハモる。

「は･･･はいっ。男の子ですけど、4ヶ月の雑種のネコで『武蔵』っていいますが。何か？」

「彰人、決まったわね。」

「社長、そうだね。歓迎会は海人くんの家でしましょう!!」

「ええっ。オレの家ですか？」

「ええ。社長命令よっ。ネコと聞いてだまっておけるもんですか。それも子ネコの男の子なんて～～～～。ラブリーすぎるっ。」と萌え萌えの麗華さんと彰人さんに絶句する。

「オレたちネコが大好きなんだけど、両親がネコアレルギーで飼えないんだ。まわりに飼ってる奴もいないしさ。でも海人くんが飼ってるなら遊びにいくよ。歓迎会は歩も連れて行っていいかな？歩もネコが大好きなんだよねぇ。」

「お料理とかはケータリングするからねっ。お願い。海人くん、武蔵ちゃんに会わせてぇ～～～。」
すっかり素の麗華さんに最初の出来る社長のイメージは吹き飛んでしまった。

「わかりました。でも引っ越したばかりで部屋も片付いてませんし、武蔵も慣れてないのでもう少し後になってもいいですか？」

「もちろんよ。落ち着いたら教えてね。」

「社長、もうすぐパーティの時間になりますよ。車が来るんでしょ。」

「そうだったわ。じゃ、店長、海人くんに仕事の説明と明日からのシフトを作っておいて頂戴。海人くん明日からヨロシクね。」
麗華さんは社長モードへと表情を変える。とたんに最初の出来る社長へと変貌し部屋を出て行った。

「じゃ、海人くん店を案内するね。」

「お願いします。」

オレは彰人さんに連れられ、スタッフに挨拶しつつ店内を案内してもらい仕事について説明を受ける。明日8時半に出勤するよう言われ書店を後にした。

「ふー。疲れた。でもいい人でよかったな。」

スタッフも優しい人ばかりで明日からが楽しみだ。そう思いながら歩いているとハーブティのお店があるのに気が付いた。

この間この辺を見た時は気がつかなかったな。

麗華さんにハーブティをごちそうになったこともあり、オレはその店へ足を進めた。

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ハーブティ大好きなんです。私は『Veda.Vie』（ヴェーダヴィ）のハーブティが好きです。インターネットで購入したこともあるんですが、見て選べないので失敗してしまいました。それ以来、自分の目で確かめて購入しています。

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