キミと空とネコと28

手が震えてなかなか手紙が取り出せずイライラする。

やっと手紙を取り出すと5千円札がハラリと落ちる。

なんで5千円？

手紙を読めばわかるだろうと手紙を広げる。




『　　　　杉野　雪夜様　響夜様



この度はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。

おかげさまでインフルエンザは治りました。

雪夜さんと響夜さんが看病をして下さったからだと感謝しております。

本当にありがとうございました。

あの夜はひどいことを言ってしまい申し訳ありませんでした。

でも、この傷は誰にも知られたくないし、見られたくないし、触られたくなかった。

無神経だと思った事は本当でそのことは許せません。

雪夜さんや響夜さんにはこんな傷なんて何とも思わないでしょうが、オレにはそうじゃないんです。

よかれと思ってして下さったのだと、オレのためにして下さったんだと思ってもダメなんです。

だから、貴方たちを見るとまた酷い事を言ってしまうと思うし、思い出すから会うのが辛いんです。

逃げているのだと思います。でも、そうしないと今のオレは生きて行けないんです。

だからオレのことはいなかったと思って下さい。ご迷惑をお掛けし、手を煩わせたのに勝手なことを言ってるのは十分わかっているのですが、こうすることしか考えられませんでした。ごめんなさい。

冷蔵庫の中のスポーツドリンクやゼリー飲料ありがたく食べさせていただきました。代金を同封致しております。

今までいろいろとご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。

お身体には十分御配慮下さい。

ありがとうございました。お元気で。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高瀬　海人　　』


キレイな字の手紙がとても寒々しかった。

海人はオレたちを拒否したんだ。

雪夜に電話して話そうとしたけど声にならず、どう話していいのかもわからなかった。

「響夜？どうした？」

「雪夜･･･。海人が消えたよ。」

「どういう事？もう仕事終わるからそっちに行く。待ってて。」

ツーツーという電話の音を考えの回らない頭で聞いていた。

オレ、海人がいなくなった事がこんなにもショックなんだ。会って話せば大丈夫だと思ってた。わかってもらえるだろうってタカをくくってた。でもそれって会って話せなかったら何にもならない。オレは話をすることも許されない過ちを犯したとでも言うのか。命を絶とうとした海人を助けたのはオレだともっと早くに打ち明けていたらこんなことにはならなかったのか？今更言ったところでどうしようもない。後悔しても時間は戻らない。

いつの間にか涙がこぼれていた。

えっ。オレ泣いてる？オレが･･･？海人が居なくなったくらいで･･･。オレそんなに海人のことを愛してたのか。
『愛している？』バカだ。オレ。そんな大事なことにも気がつかないなんて。初めての感情で分からなかった。これが愛するってことなのか？今更になってわかるなんて今まで好きにしてきた報いなのか？

「響夜っ。海人くんが消えたって本当なのか？」

息せき切って来た雪夜がオレを見て息をのむ。

「響夜お前･･･泣いて･･･。」

黙って雪夜に海人からの手紙を渡す。雪夜はそれを静かに読んでオレを見る。

「響夜、しっかりしろ。携帯は？繋がらないのか？お前はこのままでいいのか？泣いてるのはどうしてだ。海人くんのことを本気で好きになったんだろ？諦めるのか？」

「携帯は番号が変わったのか解約したのか通じない。諦める？海人を？ダメだ。そんなこと出来ない。忘れられるわけないだろ。いなかったなんて思えるわけない。涙が出るほど愛してるのに。こんな気持ち初めてなんだ。何もしないで諦めるなんて出来るわけないっ!!」

オレの闘争本能みたいなものが湧きあがってくる。

「そうだよ。響夜はそうでなくっちゃ。泣いたり諦めたりするのは響夜らしくない。響夜が諦めるならボクが海人くんをもらおうかとも思ったんだけど、今回は響夜に譲るよ。響夜の初めての恋だしね。」

「雪夜でも海人は渡さない。絶対に。誰にも渡さない。」

「でもどうするの？海人くんの手がかりはないんだろう？」

「手がかりはなくても探すよ。」

「探偵事務所にでも頼む？」

「いや、それは最後の手段だ。海人はそんなことされたって分かったら、ますますオレを遠ざけると思う。海人のことだからそんなに遠くに行くとは思えないんだ。恋人の影をひきずってるしな。恋人の思い出のあるところでひっそりと住んでる気がする。それに仕事もしてないのに引越し資金がそんなにあるとは思えない。」

「ふん。泣いてたくせによくそこまで考えられたな。」

「雪夜がはっぱかけてくれたからな。」

「そうでなくちゃ。ボクで役に立つ事があれば何でも言って。協力するよ。」

「ありがとう。オレ絶対に海人を見つけるから。」

そう。オレは絶対に海人を見つける。そして命を助けたのはオレだという事、海人を本気で愛してることを伝えるのだと固く心に誓う。

海人がオレのことを好きになってくれるかどうかはわからないけど、オレはオレの心のままに正直に海人に伝えよう。海人を見つけた時、もし好きな人がいたとしてもオレは諦められないと思う。愛しているのは海人なんだと。こんな気持ちは初めてなんだと。海人が教えてくれたんだと伝えるそう決めた。

その日から仕事をしながら、海人を探す日々が続いた。

海人お前は今どこにいる？オレは海人に会いたくて仕方がないよ。愛してるんだ。海人･･･。

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初めて訪問して下さった皆様、いつも読んで下さる皆様、本当にありがとうございます。拍手も嬉しいです。励みになります。感謝です☆

昨日、今日と響夜の目線で書いて見ました。響夜が泣くなんて･･･。やっと『愛する』ことを知りました。今まで好き放題してたのに『愛する』相手とは巡り会えていなかった響夜。会えないのは仕方ないです。今までが今まででしたから。雪夜に海人を取られないように響夜も必死です。野獣パワー全開でしょうか？あんまり野獣を前面にだすと海人に引かれるぞ響夜。明日からは頑張っている海人に戻ります。



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