キミと空とネコと26

「『Garden Of　The Angel』天使の庭か。ほんとそんな感じの店だな。」そう思いながらハーブティを選んでいると「いらっしゃいませ。」と店員が寄ってくる。オレこういうの苦手なんだよ。一人で見させて欲しいなぁ。そう思いつつ店員を見ると、スーツ姿の天使のようなかわいい男の人がニコニコと微笑んでいる。ん？スーツ姿の店員？と不審に思って見ていると

「ハーブティお好きですか？ボクはすごく好きなんです。その手に持ってらっしゃるのボクが企画したものなんですよ。嬉しくてついお声を掛けてしまいました。すいません。」

確かにオレは天使のシールの貼ってあるハーブがMIXされたものをを持っていたけど、それをこの人が企画したんだ。店員じゃないんだ。

「そのハーブティはほんとにオススメですよ。すごくいいハーブなんです。ローズヒップもボクが探していいと思ったものなんです。」と嬉しそうにしている。ほんとにハーブティが好きなんだな。そんな人の選んだものならおいしいに決まってる。

「オレもハーブティが好きで、この店に何だかひかれて入っちゃったんです。いつもはインターネットで購入してたんですけど、家の近くにこんな店があるなら今度からここで買おうかな。」

「ほんとですか？ありがとうございます。男の人で分かってくれる人ってあんまりいないから嬉しいです。ぼく『水野　悠』と言います」と名刺を差し出された。

『Garden Of The Angel　企画部　水野　悠』ほんとに企画部の人なんだ。

「じゃコレ買います。」

「ありがとうございます。これ、おまけしちゃいますね。ナイショですよ。」シッと人差し指を口にあてて言う仕草もかわいい人だ。彼は小さいラベンダーのハーブをつけてくれた。

「安眠効果がありますのでリラックスしたい時に飲んでみてくださいね。今日買われたハーブに混ぜてもおいしいですよ。」

「ありがとう。さっそく飲んでみます。」

「ありがとうございました。」

何だか今日はいい事がたくさんある日だなって嬉しくなる。

こんなにたくさん新しい人と知り合い、ちゃんと接したのっていつぶりなんだろう。

疲れたけど嫌な気分ではない。

そんな気分のままマンションに帰り、武蔵のご飯をしながら武蔵に今日の出来事を話していた。

「武蔵。仕事決まったぞ。大好きな本に囲まれて何だか楽しそうな職場だよ。ハーブティのいい店も見つけたんだ。寝る前に飲んでみよう。武蔵、明日からは昼間オレいないけど我慢してくれよな。仕事しないと武蔵のご飯買ってやれないから。ああ、それと武蔵。落ち着いたらここに社長と店長と店長の恋人さんが遊びに来るって。みんな武蔵に会いたいんだって。」

「みゃー」ご飯を食べて満足気な武蔵は「OK!わかったよ」と言うように鳴いた。

「今日は何を食べようかな？明日から仕事だししっかり食べとかないとな。」
冷蔵庫をのぞき、ハンバーグにする。ハンバーグの上に大葉と大根おろしとなめたけをのせポン酢を少しかけて食べるとおいしいんだよね。

余ったハンバーグのたねは一つずつラップに包んで冷凍にする。

ハンバーグと白菜の味噌汁と小松菜のおひたしが今日のメニュー。まだたくさんは食べられないので男にしては少量だけどバランスよく食べることを心掛ける。
今日はたくさん動いたし、いろんな出会いがあったからかおいしく食べれた。

「ごちそうさまでした。」

後片付けをして武蔵と風呂に入る。

「武蔵。ここのお風呂は前のとこより大きくて気持ちいいだろ。」

「にゃん。」

二人で風呂を満喫する。一日の疲れが流れていくみたいだ。

「そうだ。あのハーブティの店にアロマも置いてあったな。入浴剤とかもあるのかな？今度仕事帰りに行って見てこよう。」

風呂から上がっていつものように武蔵の毛をドライヤーで乾かす。

明日の用意をしかばんに契約書と念のために印鑑を入れる。

寝る前に今日買ったハーブティを入れて飲む。

水野　悠か。同じくらいの年なのかな。年下かもな。でも好きな事を見つけてちゃんと仕事してる。ほんとに今の仕事が好きそうだったな。オレも社員として認めてもらえるように頑張らないと。でもさ、男なのにあんなにかわいいといろいろと大変そうだけどってオレみたいな性癖じゃあるまいし。でも性癖は関係なく男にも女にも言い寄られそうだ。みんないろいろあるよなぁなどと考えていると砂時計の砂がみんな落ちた。ハーブティの抽出時間にオレは砂時計を使う。何だか砂が落ちるのを見ているのが楽しくて好きなんだ。

「わぁ。マジでおいしい。香りも味も。今度は違うのを買ってみようかな。麗華さんにも入れてあげたいな。パーティとか大変そうだし。」

おいしいハーブティで癒され武蔵にも癒されつつ眠りにつく。

「武蔵。明日からはどんな事が待ってるんだろう。オレ仕事ちゃんと出来るかな。接客ちゃんと出来るかな？麗華さんは無理に笑わなくていいって言ってたけどお客様には愛想よくしないとダメだよな。」

いろんなシュミレーションをしてみるけど接客をした事が無いからイメージがわかない。

前の会社もパソコン相手だったしな。

いろんなを事考えているうちにハーブティが効いてきたのか、睡眠薬や安定剤を飲むことなく眠りが訪れた。

薬を飲まずに寝るなんて久し振りだなぁと思っているうちに武蔵と共にぐっすりと朝まで眠ったのだった。

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