☆空に浮かぶ月(The Missing Moon)☆

キュンと琴線に触れるようなBL目指しています。拙い文章ですがよろしければお立ち寄り下さいませ。(๑→‿ฺ←๑)♫ ♫♬♪♫

さよならが言えなくて。34 

[ さよならが言えなくて。]


隆也の家でハウスキーパーのバイトを始めてから1週間が経った。

隆也の家の中の荷物の場所も覚え、調理器具も揃って来て少し生活感のある空気がしてきたような気がする。

基本そんなに物を買ってきたり、物を置いたりする性格ではないのか掃除といってもそんなに汚れることはなく、もともとプロに頼んでいただけあって掃除は割と簡単だ。

洗濯物もそんなに溜め込むわけではないし、毎日のように僕がしているので楽だと思う。

料理についても文句を言われる事もなくちゃんと食べてくれる。毎回1品リクエストがあるのでそれに合わせたメニューを作るから、メニューで困る事はあまりない。何でもいいっていうのが一番困るから。でも毎回リクエストしてくる1品が必ず和食で、難しいものではないのだけど、カレイの煮つけとか、レンコンのはさみ揚げだとか、茄子の揚げ浸しとか、うの花とか…。何だか意味があるような気がするのは気のせいかな?誰かに作ってもらった事のある料理を重ねてる気がするんだ。それを隆也に聞くのが怖くて聞けないんだけど…。

いつも隆也がいるとは限らなくて、合鍵で入る事もある。いいのかなと思っていたのは最初だけで、今では普通には入れる様になった。

最初は誰か来てたらどうしようとか、バイトに来てる時に他の人が来たらどんな顔をすればいいんだろうとか悩んだんだけど、それは杞憂に終わった。だってここに他の人が来る事なんてなかったから。

「他の人間を入れるくらいなら俺がそこに行く」と隆也は他人を家に入れる事はなかった。自分のテリトリーに入れるのが本当に嫌らしい。そんな人がよく僕を受け入れたなと思うけど、それは僕が人畜無害で、気を使わないからだと隆也は言っていた。それって僕が空気みたいなもんだって事?いてもいなくても一緒みたいな感じ?

聞きたくても聞けない。聞いて隆也が僕を嫌いになったら、このバイトを断られたらと思うから。結局好きになった者の負けなんだよね。

毎日じゃないけど、隆也の会える事、会えなくても隆也を感じられる事は僕にとってはすごく幸せで、隆也の為に何かが出来る事が嬉しかった。

たまに一緒に食べる夕食も会話はそんなになくても嬉しかった。なんだか家族みたいだと思った。隆也の家族みたいだって。

僕には敦兄も有紀もいるけど隆也には傍にいないから、僕がその代わりにでもあんれればいいなと思った。一人で食べる夕食じゃなくて、誰かと手料理を食べるって大切な事だと思う。そりゃ隆也は外食、それも高級そうなのに慣れてるからそっちの方がいいのかもしれないけど、「こんな料理もいいな」ってぼそりと言ってたから、一緒に食べる時は料理の説明をしながら食べる。

今日はスーパーでこれが安かったとか、この食材は今が旬なんだとか、隆也にとってはくだらない話かもしれないけど出来るだけ会話を絶やさないようにしている。黙って食べるのもいいけど、二人で食べてるってわかって欲しいから。一人じゃ会話は出来ないけど、二人なら出来る。楽しい食事にしたいんだ。

まあ話すのは僕ばっかりで、隆也は返事をするくらいなんだけど、隆也はちゃんと僕の話を聞いてくれている。



「樹ちゃん、隆也の家のハウスキーパーどう?もう慣れた?」

一緒の講義の時間の時に智也が僕を見つけて話しかけてきた。隆也はまだ来ていない。

「うん。わりとね。隆也あんまり汚さないし思ったよりも楽だよ。こんなんでバイト代もらっていいのかなって思うよ」

「そうなんだ。でも隆也が樹ちゃんを家にいれるって以外だったな。続くと思わなかったんだ。正直言って。」

「どうして?」

「うーーん。今まで隆也の家に毎日のようにくる奴っていなかったからさ、隆也きっと窮屈に思うとか煩わしく思うとかあると思ってたんだ。あ、これ樹ちゃんがどうのこうのっていうんじゃなくて、誰でもそうだと思ってた」

「うん。わかるよ。僕だって以外だったもん。もう来なくていいって言われるかもって思ってた。最初の頃は」

「でも最近隆也の機嫌もいいし、夜遊びばかりしてたのに最近は夜は家に帰ってるみたいだし」

「そうなんだ。行ってもいない事あって、そんな時でも料理は作って置くんだけどちゃんと食べてくれてたんだ」

「よっぽど樹ちゃんの料理が気に入ったんだね」

「残さずに食べてくれてる。そう言えば、隆也が居ない時に作ったのもちゃんと食べて最近は食器洗ってくれてる」

「へえ隆也がねえ」

「俺が何だって?」

「あ、隆也、今日食べたいものある?」

「鯖の味噌煮」

「わかった。あとのメニューは勝手に決めてもいい?」

「ああ」

「いいよなあ。毎日樹ちゃんの料理食べられてさ。おいしいだろ?」

「まあまあだな。食べれないものはなかった。洋食は作らせてないからどうかわからないが和食は合格だ」

「ふふっ。何様って言い方がムカつくけど隆也が嬉しそうだから良しとしてくか。樹ちゃんには気の毒だけど」

「合格って言ってもらえて嬉しいからいいよ。隆也がこんな言い方なのは慣れてるから気にしない」

「樹ちゃんって健気だね」

「智也、俺に喧嘩を売っているのか?」

「そんなわけないじゃない。俺は隆也も樹ちゃんも好きだからね。という事で俺も鯖の味噌煮食べたい。樹ちゃんの手料理食べたい。だから隆也の家に行く事に決めた」

「おいおい勝手に決めるな。誰がお前を呼ぶと言った?ポチの料理を食いたいんなら自分の家で作ってもらえ」

「それ無理でしょう。樹ちゃんは平日毎日隆也の所に行ってるし、土日は俺バイトだし。だから隆也の家に行くしかないじゃん」

「ポチも作るのが大変だろうが」

「僕は平気だよ。一人ぐらい増えても大丈夫」

「ほら樹ちゃんもこう言ってくれてるし。ね、隆也お願いします」

「本当にお前という奴は昔からそうだ。遠慮と言うものがない」

「隆也相手に遠慮なんてしてたら今まで付き合って来れないよ。隆也が実は頼みごとに弱いの知ってるからね」

「勝手に決めるな。俺は別に弱い物なんてない。あんまり変な事をポチの前で言うな」

「じゃ隆也の家に行ってもいいね。ダメって言ったら樹ちゃんにあんな事やこんな事言っちゃうよ」

「勝手にしろ」

「てなわけで樹ちゃん俺の分も鯖の味噌煮よろしくね」

何だか今日の夕食はますます賑やかで楽しくなりそうだ。

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さよならが言えなくて。33 

[ さよならが言えなくて。]


全ての講義を終えて、隆也の家に行く前にスーパーに寄った。

今日は茶碗蒸しが食べたいって言ってたから、その材料と、茶碗蒸しの器も買わなくちゃいけない。

茶碗蒸しの他は山菜の炊き込みご飯と、赤魚の西京焼き、たことワカメの酢の物、水菜と豆腐のサラダに決めた。家で作る夕食もいつもバランスの良いものをと考えるけど、いつも以上に張り切ってメニューを考えた。すごくワクワクして浮かぶメニューから厳選して決めたメニューだ。その他にも作る時間があれば千切り大根とひじきを炊いておこうとその材料も買う。買い物代にと昨日隆也から手渡されたのは10万円。

こんなに要らないと言ったけど、何にいるかわからないからと渡された。いくら買い物代をもらってるとはいえ、無駄遣いをするつもりは全くなく、出来るだけ安く上げるつもりでいる。10万円もあれば2か月はゆうに持つだろう。

買い込み過ぎて少々重くなった荷物を持ち、隆也に行く事をメールすると、隆也から「家にいる」との返信。いないかと思ってたからちょっと嬉しい。

マンションのエントランスで合鍵を出すのに荷物を置こうとしたら入口が開く。そこには隆也が立っていた。

「すごい荷物だな。そんなにあるならメールする時に言えば良かっただろ」

「重いけど持てたから」

「一つ持つ。よこせ」

無表情であるいは少し怒ってるのかもしれない。そんな顔で僕の持っていた一番重そうな荷物を持つとスアスタと先に進む。

メールを見て迎えに来てくれたのかな?

「わざわざ迎えに来てくれたの?」

「新聞を取りに降りてきたついでだ」

嘘だ。頼めばコンシュルジュがドアまで運んでくれるって昨日言ってた。迎えに来てくれた優しさにちょっと笑みがこぼれる。しつこく言うと機嫌が悪くなるから深く聞かないけどね。

部屋に入ると買って来たものを振りわけ、下ごしらえを少ししてから、洗濯と掃除にかかる。昨日干していた選択物もといれなくちゃ。

「ポチ、少し休憩しながらしたらどうだ」

「ごめん。うるさかった?あ、隆也何か飲みたい?何入れようか?」

「休めって言ってるんだ。そんなに急いで何もかもしなくてもいい。見ててこっちがせわしなくなる」

「でも仕事だし、ちゃんとお給料もらう分働かないと」

「休むのも仕事のうちだと思え。俺が休めと言う時は休め。せわしない奴だ本当に。コーヒー淹れてくれ。もちろんポチの分もだ。淹れたらここに座って一緒に飲め。冷蔵庫にケーキがあるから食べてもいいぞ」

「ケーキ?隆也が買って来たの?」

「もらった」

そう言ってフイッと顔をそらす。?と思いながらもコーヒーを二つ入れ、冷蔵庫の中を覗くと大きなケーキの入ってる白い箱が目に飛び込んできた。

もらったって…。これ隆也一人に?でも隆也って甘い物好きだったかな?

「隆也って甘い物好きなの?」

「好きではないな。一つくらいなら食べれるがそれ以上は無理だ。」

甘い物が好きじゃない隆也にこんなにケーキを渡す相手っているかな?もしかして買って来てくれた?まさかね。

コーヒーを持って行った後でお皿とフォーク、ケーキの箱を持って行く。

隆也の家は調味料とか調理器具はないのに食器とかスプーンフォークは揃ってる。母親や父親がもらったものを置くっt来るからだって言ってた。さすがに茶碗蒸しの食器はなかったけどね。

ケーキの箱を開けると、中にはぎっしりとケーキが入っている。

「隆也はどれを食べるの?」

「甘くない奴」

甘くないもの…。フルーツのゼリーを隆也のお皿の上に置く。

「ポチは好きなだけ食べていいぞ。俺は食べないから」

「ご飯前だから一つだけにしておくよ」

シュークリームがあったのでそれを取ろうと手を伸ばす。

「シュークリームなんてどこででも食べれるだろ。このいろんな果物の載ったタルトがオススメだと言っていたからそれにしろ」

「誰が言ってたの?」

「そこのパティシエだ」

「買って来てくれたんだね」

「俺が食べたかったからでポチの為じゃないぞ」

言ってからムスッと口を歪めた。やっぱりもらったんじゃなくて買って来てくれたんだ。オススメのケーキまで聞いてくれたみたい。自分の為って甘い物あまり食べないのにこんなに買わないよね。初めてのバイトの日だから買ってくれたのかな?

隆也がオススメしてくれた果物のタルトを自分の皿に入れて「いただきます」と小さく言ってから一口食べる。

「うわー。隆也、すごくおいしいよ。果物の下にカスタードクリームが隠れててタルトと絶妙っ。果物も新鮮でフルーティだし、甘くておいしい」

「そうか。良かったな」

これ絶対に有紀が好きだ。どこのケーキだろ?

「これどこのケーキ屋さん?」

「ここから車で20分くらいの所にある」

「車で20分か。買いに行けないなあ」

「何だ。買いに行きたいのか?」

「うん。有紀が好きなケーキだと思うんだ。有紀にも食べさせてあげたいなあと思って」

「有紀?ああ、あの生意気なポチの妹か」

「生意気って…。人の妹の事そんな風に言わないでくれる?有紀は着は強いかもしれないけど優しい子だよ。いつも僕の事を心配してくれてるんだ」

「ふーん。ま、どうでもいいけど。俺には生意気な女としか思えないな。ガキだし。俺はガキは嫌いだから」

「隆也…。」

「まだ同じケーキが残ってるだろう。残りのケーキは持って帰ればいい。家に置いててもオレは食わないからな」

「いいの?」

「ああ。冷蔵庫の中にあったら邪魔だろう。持って帰れ」

「ありがとう。じゃ遠慮なくもらうね。有紀が喜ぶよ。ちゃんと隆也からもらったって言っておくね」

「そんな事言わなくてもいい」

ムスッとしながらコーヒーを飲む隆也にもう一度ありがとうを言ってケーキを口に運ぶ。本当にこのケーキ美味しい。

ニコニコと笑いながら食べる僕をじっと見ていた隆也が、僕が口に運ぼうとしたケーキを僕の手を掴んで自分の方へ引き寄せパクリと自分の口の中に入れる。

「……っ‼」

「あっまっ。よくこんなのが食えるな」

「ぼ、僕の食べかけ食べた」

「それが何だよ。ポチがあんまりうまそうに食うから食べて見たくなったんだ。何赤くなってんだ?」

「人の食べかけを食べるなんて。ビックリして顔が赤くなったの‼」

「変な奴だな。それくらい何ともないだろ。女じゃあるまいし」

「そうだけど…。」

僕は残りのケーキを口に頬張りコーヒーで流し込むと赤い顔を見られたくなくて、食器をキッチンに運ぶ。

「僕、料理作るから。隆也はどうするの?」

「ああ。部屋で課題やってくる。出来たら呼んでくれ」

「わかった」

もう隆也ったら。いきなりあんな事しないで欲しい。隆也には何ともない事でも、僕には初めての事なんだから驚くにきまってるじゃないか。僕は隆也の事が好きだから、余計に心臓がバクバクしちゃうんだよ。まるで恋人同士がするみたいだって思っちゃってますます顔が赤くなったなんて絶対に言えない。

思い出しては顔が赤くなるから、考えないように料理に集中して作った。気が付くと考えてたメニュー以上のものを作ってしまって、隆也に驚かれたのは言うまでもない。

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さよならが言えなくて。32 

[ さよならが言えなくて。]


一緒に夕食を食べて片付けをする。

隆也の家でのハウスキーパーのバイトは平日だけで、土日は基本休み。土日は出かける事が多いので休みらしい。ただし呼ぶ事があるかもしれないとも言われた。無理な時は断ってくれて構わないとも…。

「俺が居ない時もあるから勝手に入ってくれていい」と合鍵までもらってしまった。意味のある合鍵ではないけど、なんだか嬉しい。隆也に認めてもらったような錯覚を覚えて、そんなんじゃないんだと自分に言い聞かせる。隆也はハウスキーパーとして僕を雇ってくれただけなんだから。

隆也に家の中の掃除の仕方や、物の置き場、使い方を教えてもらう。洗濯機や掃除機などの使い方はわからないと説明書を渡された時は本当に隆也は何もしないんだと驚いた。

ついでだからと洗濯機の使い方を説明書を見ながら洗濯をする。乾燥機もあったけど、隆也の事だから洗濯物を出す事もしないだろうと、ベランダに干す。明日、忘れないように取り込まないと…。

「明日はびっちり講義があるんだ。買い物してから来るから少し遅くなると思う。行く前にメールするね」

「その辺は適当にポチのしたい様にしてくれ。俺が居なくても合鍵で入ってやっててくれていい」

「わかった。明日食べたいものとかある?」

「茶碗蒸し」

「茶碗蒸し?」

「作れないのか?」

「作れるけど…。何か隆也のイメージになかったから」

「勝手にイメージするな。ポチが食べたいものって言うから言ったんだ」

「ごめん。他にはある?」

「ない」

「わかった。じゃ明日は茶碗蒸しにあったメニューにするね。炊き込みご飯とかは平気?混ぜご飯嫌いな人とかいるから」

「ああ。平気だ」

「じゃ明日のご飯楽しみにしてて。僕帰るね。また明日」

「ああ。明日」

また明日…。約束された言葉が胸に残る。

これからは平日は毎日隆也の傍に居れる。ハウスキーパーという名目だけど隆也の日常に関われる事がすごく幸せで嬉しい。

帰り道は思わず顔がゆるんでしまいそうになるのを抑えるのが大変だった。



「反対‼何で樹があいつの所でハウスキーパーなんてしなくちゃいけないのよ。家の夕食はどうすんの?」

「もう決めちゃったことだから。バイトする話はしてたでしょ。有紀もいいって言ってくれてたじゃない」

「あれはあいつのところに行くとは思わなかったからよ。外でバイトする分には樹にも良い事だって思ったし…。あいつのと子以外なら賛成するわ」

「他のところなら良くて隆也のとこはダメなんて納得いなかないよ。とにかくもう決めた事だから。僕は隆也の家でバイトする」

「ダメだって言ってるでしょ」

「樹も有紀も喧嘩しない。いいじゃないか。樹が外でバイトする事、少し心配してたから友達の家なら安心だ」

「敦兄はあいつの事を知らないからそう言うのよ。あいつの事だから樹の事を良いように使うに決まってるわ。樹も何もいえないだろうし」

「有紀、いい加減にしなよ。隆也はそんな酷い奴じゃないよ。バイトの事も僕にあうものはなかなかないだろうからってハウスキーパーしないかって言ってくれたんだ。僕の事をわかってくれてるんだよ。それに隆也は僕の作ったものをおいしいって何度もおかわりして食べてくれるんだ。毎日外食ばかりみたいだし、一人暮らしだから心配なんだ。家事何も出来ないみたいだし」

「有紀。いいじゃないか。樹がこんなに言うなんて滅多にない事だぞ。樹のしたいようにやらせてやろう。土日は休みだしその時に樹に夕食を作ってもらえばいいじゃないか。いつも樹にばかり作らせてるんだ。平日は俺たちで交代で作ればいい」

「僕、出来るだけ作って冷蔵庫に入れておくから。敦兄は仕事のあとでなんて大変じゃない」

「遅くなっちゃうけど俺も作る。お前らばかりに負担かけるのもな。お兄ちゃんだからさ」

「もう。私が作るわよ。敦兄も樹も私がいる事を忘れないで。樹の料理には敵わないけど、私も女なんだしおいしい料理が作れるように今から頑張らないとね。樹、いろいろ言ったけどもう言わないわ。でも納得したんじゃないから。これからの樹を見て、止めた方がいいと思ったら言うわよ」

「ありがとう敦兄、有紀。僕頑張るよ」

何とか許しをもらってホッとする。もしかしたら有紀が許してくれないかもしれないって思ってたからもっと反対されるかと思ってたけど敦兄のおかげで許してもらえた。あとは有紀に安心してもらえるように頑張らないといけない。

僕が隆也の所で頑張れば、有紀の隆也に対する敵愾心も和らぐかもしれない。頑張らなくっちゃ。



次の日、智也に隆也の家でハウスキーパーのバイトをする事になった話をすると驚かれた。

「隆也が樹ちゃんを家に入れるなんて、よっぽど樹ちゃんを気に入ってるんだな。これまで親しい人を家に入れる事なんて滅多になかったんだよ」

「でも智也も隆也の家に行ってるんでしょう?」

「飲みに行って帰るのがめんどくさくなって無理やり泊まったとか、俺が押しかけてとかだから、隆也から来いって言われた事ないんじゃないかなあ」

「そうなの?」

「そうなの。隆也、自分のテリトリーになかなか他人を寄せつけないからね」

「そうなんだ。じゃあなんで僕は許してもらえたんだろ?」

「うーーん。料理じゃない?樹ちゃんの作るものってなんか温かくて美味しくて心まで元気になる感じがするもんな。味付けも隆也の好みなんじゃない?あいつ外食ばかりだし、その外食も高いものばかりだろ。間違っても居酒屋とかいかないもんな」

「そうなんだ。外食が多いとは言ってたけど。でも僕の作る料理なんて居酒屋にあるようなものばかりだよ」

「日頃洋食が多いから和食が食べたくなるんだろうな。案外子供舌でその内カレーライスだとか、ハンバーグとかいいだすんじゃない?」

「誰が子供舌だって?俺が居ない時にオレの話してんじゃないぞ智也」

「隆也、久しぶりだね。前の彼女とはうまくいくかと思ったのに別れたんだ」

「ああ。上手くかくしてたつもりかもしれないが、結局は俺じゃなくて俺についてる付加価値が欲しかっただけだった」

「それはそれは。モテる男は大変だね」

「何だ?喧嘩でも売ってるのか?茶化した言い方は好きじゃない。お前だってモテるだろうが」

「俺は気持ちの傾かない女の子とは付き合わないよ。顔じゃなくて性格重視だからね」

「良く言う。高校の時のお前は綺麗な女なら来る者拒まずじゃなかったか?」

「まあそういう頃もあったね。俺も男だからさ、そういうのに一生懸命だった事もあったけど、もう大人だからね。それなりの付き合いをしていかないと。いつまでも子供みたいじゃね、本物を見失ってしまうって気が付いたんだ」

そう言った智也が僕を見る。どうして僕を見るのかわからずに首を傾げていると隆也に腕を掴まれて意識が隆也に向く。

「次の講義、この教室じゃないだろ。早く行かないと遅れるぞ」

「え?あ、うん。じゃ隆也、智也又ね。隆也、今日行く時にメールするね」

「ああ。急がなくていいから。荷物が重かったら言えよ」

「うん。ありがとう。でも昨日たくさん買ったから一人で大丈夫だよ。じゃあね」

少し苛立ったような顔をしてた隆也が優しい顔をしてくれたのが嬉しくてヒラヒラと手を振って教室を出た。



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更新遅れます☆ 

[ ご挨拶]


いつも読んで下さいましてありがとうございます。

今日の更新ではなぜか0時に予約投稿しておりましたのに、ブログ村では2時過ぎの更新…何故なんでしょうかね。予約投稿は私には鬼門なんでしょうか…。

という事はさておき、申し訳ありません(> <。)

32話の更新が遅れます。

2時頃には更新しているかと思いますが…。

待っていてくださる方がいらしたらごめんなさい。

よろしくお願いします☆

†Rin†
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さよならが言えなくて。31 

[ さよならが言えなくて。]


タクシーに乗ってものの5分程で付いたマンションは高層マンションで、セキュリティーが整い、管理人が常駐している。管理人というよりコンシュルジュと言った方が正しいんだと思う。

コンシュルジュなんて知らなかったけど、隆也が教えてくれた。「間違っても管理人なんて呼ぶなよ」と一言付きで。

エレベーターは3基。

どれだけの部屋数があるのかわからないけど、3基もあるなんて贅沢だと思った。

重い荷物に隆也が顔をしかめていたけど見ないふりをした。僕だって両手に荷物を持ってる。これ以上は持てない。目が合えばもう一つ持たされそうだ。

エレベーターが17階で止まると隆也のあとをついて行く。

隆也は何も言わずにスタスタと行ってしまうので置いてけぼりをくわないように慌てて荷物を持ち直した。

「うわ~~~~。広い玄関だね。剥製の玄関マットとか敷いてそうな感じ。シャンデリアとかあっても不思議じゃないよね」

「何だその貧困な発想は」

呆れたように僕を見て部屋の中に入って行く隆也について行く。

突き当りの部屋はリビングダイニングでまるでモデルルームのように美しい部屋は生活感と言うものが全く感じられなかった。人が住んでるとは思えないほど無機質な部屋。いくら広くて綺麗でも何だか落ち着かない。

「ここに一人で住んでるの?広いよね」

「ああ。4LDKだか5LDKだかあったはずだ。家族で住んでる家だからな。まあ二親とも忙しくて飛び回っているからいないがな」

「お父さんもお母さんも帰って来ないの?」

「年に1回帰ってくればいいほうだろう。二人ともホテルに泊まってる方が多い。まあ本当にホテルに泊まってるのかわからないけどな。金だけはいつでも十分すぎるほどに送って来る。金さえ送ってればいいと思ってるような親だからな。まあ何も言われないから今のままで不足はない」

「そんな…。」

「何だ?俺に同情でもしてるのか?よしてくれ。俺はこの生活に不満はないし、口出しされるのもごめんだ。干渉してこない親には感謝している。本当だ」

隆也は本当にそう思ってるのか親に対して不満はないらしい。でもこんな温もりの感じられない部屋で僕なら眠れない。いつも僕の家には誰かしらの温もりがある。息遣いが聞こえる。だから安心出来るんだ。でもこの家にはそれがない。

「彼女とか呼ばないの?」

「女をこの部屋に入れた事はない。女ってのは自己主張の塊だろ。自分の持ち物を置いて存在感をアピールする。他の女のものがあるだけで責める。俺は付き合ってるつもりはないのに、テリトリーに入れただけで俺の女だと思い込む。面倒でしかないだろ。だから入れない。ポチは女じゃないからいいんだ。智也も数回だが来た事がある」

この部屋に女の人の影がないのは以外だったけど、理由を聞けば納得する。本当に隆也は他人に興味がないんだな。隆也と付き合いたいと思う女の子たちは必至で隆也の関心を引こうとしてるのに、今まで関心を持った女の子はいないのかな?

「雑談をするためにお前を部屋に呼んだんじゃないんだぞ。早く作れよ。お前も家に帰るのが遅くなるぞ」

「あ、家に連絡するの忘れてた。メールしてもいい?」

「ああ」

電話にしなかったのは「隆也の家でご飯作ってから帰る」って言ったら、絶対に有紀に文句か嫌味を言われるからだ。

「ポチは遅くなる時はいちいち家族に連絡するのか?」

「するよ。だって夕食を作るのは僕の役目だからね。作ってなかったら迷惑かけるでしょ。有紀だって部活あるし、敦兄は仕事で疲れて帰って来るんだよ。お腹すいて帰って来て何もなかったらガッカリするじゃない。最初から作ってないって知ってたらどうにでも出来るでしょ」

「お前は母親か。まあポチの家の家庭事情なんてどうでもいいさ。出来たら呼んでくれ。俺隣の部屋にいるから」

「わかった」

バタンと隣の部屋のドアが閉まり、僕はキッチンに立つ。

家族と住んでるはずの家なのにキッチンは使った事がないようにピカピカだ。隆也は掃除もしなさそうだから、ハウスキーパーを頼んでるのかもしれないな。

調理器具を確認し、買ってきたものを綺麗に洗う。

今日のメニューは肉じゃがと鰆の利休煮、大根と人参の味噌汁とほうれん草のおかか和え。嫌いな食べ物はないって言ってたから大丈夫だと思う。

初めてのキッチンは使い勝手がわからず、新しいお鍋は使いこまれてなくて味が尖がってしまう。自分の家で作るようには出来なくて、隆也に気に入ってもらえるか少し不安になる。


「隆也出来たよ。すぐに食べる?」

「出来たのか。冷めたらおいしくないだろう。今行く」

テーブルに料理を並べてご飯と味噌汁をよそって置く。

「どうして俺の分だけ並んでるんだ?」

「え?」

「俺一人で食べろと言うのか?ポチも食べて行けばいい」

「誰か呼んで一緒に食べるのかと思ってた」

「女はこの家には呼ばないと言っただろう。他の奴を呼ぶならそいつが来るまで待たないといけなくなる。時間の無駄だ。それに連絡するのがめんどくさい」

「……。わかった。一緒に食べる」

自分の分もテーブルに並べて隆也と一緒に食べる。

「何だかこの前食べた肉じゃがとは違う気がする」

「わかるよね。良い肉使ってるから大丈夫かと思ったけど…。お鍋がね使いこまれてないから味が少し尖がってるんだ。家の鍋はもう何年も使ってるから」

「鍋が新しいと違うのか?」

「うん。他の調理器具も新しい物ばかりだしね。金物臭いっていうのかなあ。気になるよね。どこかで食べる方がいいかも」

「いやいい。まずいわけじゃない。これも上手い。デパートの惣菜とかよりもずっとうまいと思う」

「ありがとう。隆也が嫌でないならば食べてくれると嬉しい」


肉じゃがはコロッケにすれば尖がった味も気にならないかもしれない。残ったらコロッケにしてみようか。

そう考えたけど、結局二人で全部食べてしまってコロッケを作る事はなかった。

「ポチ、今日買った鍋は使いこむ方がいいのか?」

「そりゃあね。何でもそうでしょう。使いこむ方が味が出るんだよ」

「そうか…。じゃあポチが使い込めばいいんだな」

「何?」

「これから俺の時間がある時に料理してくれ」

「何で僕?誰か他の人に頼めばいいじゃない。それとかハウスキーパーに頼むとか」

「昔ハウスキーパーに来てもらった事があるが、俺には合わない。週に1回の掃除でも嫌なんだ。そうだポチが掃除もしてくれればいいんだ」

「ちょっと待ってよ。そんな事したら僕バイト出来なくなる」

「そう言えばポチはバイトを探してるんだったな。じゃあちょうどいい。俺の家のハウスキーパーをしたらいいじゃないか。ちゃんと時給は出す。ポチの都合にも多少ならあわせてやる。ポチに接客業は難しいだろう。ここなら人に接する事は少ないし、自分でやりたい様に時間を融通できる。大学からも近いしいいと思うがどうだ?」

確かに美味しいバイトかもしれない。家事なら得意だし、時間に融通が利いて、大学からも近くだ。何より隆也のプライベートに近いところにいられる。隆也をもっと知る事が出来る。

「わかった。隆也、僕を雇ってくれる?」

「ああ。商談成立だな。じゃあよろしくな」

「こちらこそよろしく」

隆也から差し出された手を握り返して握手する。

思ったよりも熱い手のひらにじわりと身体に熱を帯びたような気がした。

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† Rin †

Author:† Rin †
小説が大好きで読んでるだけで物足りず自分で書き始めました。拙い文章ですが、読んで頂けたら嬉しいです。

この小説はBL小説です。性描写も含まれます。BLに嫌悪を感じる方、御理解頂けない方、未成年の閲覧は固くお断りいたします。自己責任でご訪問下さいませ。

尚、拙いながらも作品の著作権は放棄しておりませんので、転用、転載等は固くお断りいたします。

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